院長挨拶

病院外観

 このたび、2023年4月より沖縄病院院長を拝命しました大湾勤子と申します。前任の川畑勉先生より引き継ぎ、責務を思うと身が引き締まる思いです。

 私は、1997年に琉球大学第一内科より呼吸器内科医として当院へ赴任し、現在まで呼吸器診療に加えて、緩和ケア病棟の発足・拡充に携わってきました。そして2020年より爆発的な流行となった新型コロナ感染症の診療も担ってきました。医療は多職種の連携によりその力が発揮されます。今回、院長として多くの職員が活躍できるような病院の礎を築いていきたいと考えています。

 当院は、1948年、現在の金武町に沖縄民政府公衆衛生部金武保養院として創設され、沖縄の戦後の歩みとともに琉球政府立、日本復帰後は国立療養所金武保養院と名称が替わりました。1978年には現在地の宜野湾市に移転し国立療養所沖縄病院として知られるようになりました。今でも時々「国療沖縄病院」と言われますが、2004年には独立行政法人国立病院機構沖縄病院へ移行しています。創設から今年で75年が経過し、病院としての役割も大きく変化してきました。国立療養所時代には、肺結核や筋ジストロフィーなどの政策医療が中心でしたが、時代の変遷とともに、肺がん、脳・神経・筋難病、緩和ケア、結核・非結核性抗酸菌感染症を特色とした診療が行なわれるようになりました。最近では、高齢化社会の到来に合わせて地域包括ケアを提供する病棟を2019年に開棟しました。しかし現在は、新型コロナ感染症の重点医療機関としてコロナ病棟へ転換しています。「温故知新」とありますように当院のこれまでの役割を振り返りつつ、今の時代に即した安全で良質な医療を提供できるように、職員一丸となって取り組んでいく所存です。

 これまで当院が築いてきた専門性を維持し、さらに発展させるために欠かせないのが、臨床研究と人材育成と考えます。2019年4月には国立病院機構臨床研究部が発足し、治験の参加や臨床研究の活性化に取り組んでいます。医師のみならず看護職や他の医療職の研究課題への取り組みも増えてきました。研修医・専攻医、認定看護師や医療専門職の教育、指導にも力を注ぎたいと思います。そのためには、これまで同様近隣の医療機関との積極的な交流が大切です。

 近年、医療界でもIT(情報技術)の様々な技術が応用されるようになりました。コロナ禍に対応する中で、様々な工夫がなされ、働き方に変革をもたらしています。タスクシェアが進められ、マンパワー不足を補うデジタル化も今後さらに進んでいくことが予想されます。一方で、技術だけでは補えない人との関わりや温かさが医療現場には求められます。「あなたに出会った人がだれでも、前よりもっと気持ちよく、明るくなって帰るようになさい」(マザーテレサ)という出会いや関わりができるような病院を目指していきたいと思います。

 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

2023年4月

国立病院機構 沖縄病院
院長 大湾 勤子