院長挨拶

国立病院機構沖縄病院は、基本理念として「患者様の立場を尊重し、高度で良質な医療を提供します」を掲げ、肺がん、神経難病、緩和医療、結核、地域包括ケアを中心に診療を行っています。病院の前身は1948年に開設された金武保養院で、1978年には国立療養所沖縄病院として金武町から宜野湾市に移転しました。当時は結核250床、筋ジストロフィー病棟80床という規模で、政策医療の役割を担ってきました。2004年には独立行政法人化され、現在に至ります。また、新型コロナウイルス感染症の流行期には、新型コロナ重点医療機関として対応してきました。
新型コロナウイルスの流行は多くの生活面に影響を与えましたが、医療においては、感染対策への関心が高まり、ワクチン接種の重要性が再認識されたことが挙げられます。しかし、発熱のために受診が制限され、入院患者に対する面会制限もあり、不安な療養生活を送る患者さんも少なくありませんでした。この経験を通じて、私たち医療従事者は予防の大切さを改めて啓蒙していく必要性を強く感じています。さらに、薬剤や資材だけでなく、人材の不足もあり、医療資源をどのように活用していくかが今後の課題です。
日本は「超高齢社会」を迎え、高齢化に伴ってがんや認知症、パーキンソン病などの疾患の罹患率が増加しています。適切な診断と治療、そして安心して療養を続けられる体制が、これまで以上に重要となっています。
当院では、肺がんや緩和医療に力を入れており、各医療機関からの紹介を受けて、院内がん登録数が増加しています。特に肺がんでは、遺伝子情報を活用した診断・治療に最新の知見を取り入れ、2023年4月に導入したTrueBeamによる集学的がん治療や緩和治療が効果を発揮しています。放射線治療は一般的に外来で行われますが、当院では遠方からの患者さんに対応するため、一般病棟や緩和ケア病棟での入院治療も行っています。
また、脳・神経・筋疾患の診療においては、2024年に軽度認知症に対する新薬を導入し、抗体医薬やHALを用いたリハビリテーションも継続しています。さらに、沖縄型神経原性筋萎縮症という超希少疾患の患者さんに対しては、治療につながる臨床研究を進めています。
2025年、干支は乙巳(きのと:み)年です。巳は蛇にたとえられ、蛇が脱皮を繰り返して成長することから再生の象徴ともされています。当院も、患者様のニーズに応え、社会の変化に適応し続けることで、再生を目指していきたいと考えています。職員一同、2025年度も皆様に選ばれる病院を目指して取り組んでまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
2025年4月 院長 大湾勤子