筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病気について
原因について
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因は、まだ十分には解明されていません。
神経細胞がダメージを受ける原因として、体内のサビつき(フリーラジカル)と 神経伝達物質の出すぎ(グルタミン酸毒性)の2つが重なることが、原因として有力ではないかと考えられています。
その他、神経の老化や不要なタンパク質の処理トラブル、細胞のエネルギーを作る部分 (ミトコンドリア)の不調など、さまざまな要因が組み合わさっていると考えられています。
どのように受け継がれますか?
全体の約95%は遺伝しません。
家族性ALS(全体の約5%)の場合、親から子へ遺伝子を通じて伝わることがあります。 日本人では「SOD1」などの原因遺伝子が関与しており、遺伝するタイプでは血のつながった親族 (両親、兄弟、祖父母など)に同じ病気の人がいることがほとんどです。
どのくらいの方がいますか?
全国で9,727人(令和5年度の特定医療費受給者証所持者数)です。 また、1年間で新たにこの病気にかかる人は、人口10万人当たり平均2.2人です。
遺伝子を調べるのですか?
提示された文章によると、ALSの約5%を占める「家族性ALS」では、原因遺伝子を調べる調査・研究 (JaCALSやJ-FASTなど)が行われています。
ただし、遺伝子検査の具体的な受け方や要否については主治医への相談が必要です。
診断を受けて今後が心配です
この病気のことを知ったとき、多くの方がいろいろな悩みをかかえられます。
- 「まさか自分が…」という強い否定と現実逃避
- 将来の身体の変化や進行に対する激しい不安・恐怖
- 「なぜ自分がこんな目に?」という理不尽さや怒り
- 家族への申し訳なさ(罪悪感や負担への心配)
- 絶望の先で見つめ直す「これからの時間をどう生きるか」
どれも自然なことで、ご自分でかかえこまなくてよいものです。
当院には臨床心理士や難病看護特定認定看護師が在籍しており、こうしたご相談に対して患者さんとその家族を専門的に支援いたします。 遺伝に関するご相談については院内に遺伝カウンセラーが在籍していないため、対応できる施設をご紹介します。 まずは診察の際に、主治医にお声かけください。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の症状と検査について
どんな症状がありますか?
症状の出かたや進み方には個人差が大きく、以下がすべての方に当てはまるわけではありません。
発症時の症状
- 手指の使いにくさ、肘から先の筋力低下
- 話しにくい
- 食べ物や水が飲み込みにくい
- 両側の肩周りの筋肉がやせて力が入らない
- 足の筋肉がやせて力が弱くなる
- 足先が上がりにくい(下垂足)
- 足が突っ張って歩きにくい
- 全身の筋肉のぴくつきや筋けいれん
進行後の症状
- 筋肉がやせて力がはいらなくなる
- 身体を動かすことが困難になる
- 発音しにくくなる(構音障害)
- 水や食べ物の飲み込みが難しくなる(嚥下障害)
- 唾液・よだれや痰(たん)が増える
- 日常の動作での息切れ、十分に呼吸ができなくなる(呼吸困難)
- 言語や行動の症状を中心とした認知症状
早期には出にくい症状
- 視力や聴力
- 痛みや温度の感覚
- 目やまぶたを動かす運動
- 尿や便を排泄する
- もの忘れは目立たない
どんな検査がありますか?
似た症状の病気と見分けるため(鑑別診断)や経過観察のために検査を行います。
「力が入らない」「足がもつれる」「筋肉が痩せてきた」といった症状は、一つの病気だけに起こるものではありません。 神経の病気(神経伝導のトラブル)でも、筋肉の病気(筋肉自体のトラブル)でも、とても似たような症状が現れることがあります。また、背骨(首や腰)の病気や代謝の病気などが原因で、同じような症状が出ることもあります。
症状を見ただけでは見分けることが難しいため、当院では下記の詳しい検査を行っています。
- 徒手筋力検査
- 振動覚・握力検査
- MRI検査(頭部・脊椎・筋)
- 神経伝導検査
- 針筋電図検査
- 反復神経刺激検査
- 誘発電位検査
- 末梢神経・筋の超音波検査
- 嚥下造影・嚥下内視鏡検査
- 体成分分析検査
- 重心動揺検査
- 運動機能評価
- 肺機能検査
- 終夜SpO2測定検査
- 血液・髄液検査
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療について
お薬での治療について
ALSの進行を遅らせる作用のある薬
- リルゾール
- エダラボン
- メコバラミン
- トフェルセン(SOD1遺伝子変異のある患者さん向け)
さまざまな症状をやわらげる薬
- 睡眠薬・安定剤
体の自由が利かないことや、不安などから起こる不眠に対して使用します。
ただし呼吸への影響があるため注意が必要です。 - オピオイド
息苦しさや痛みなどの苦痛をやわらげるため、早期であっても導入を検討します。 - その他
筋肉のつっぱりやけいれん、たんの多さ、感情の変化など、気がかりがあればご相談ください。
症状の感じ方はご本人にしかわからないものです。 「これくらいは仕方ない」と我慢されている方も多いのですが、 薬で軽くできる症状は少なくありません。診察の際に遠慮なくお伝えください。
お薬以外の治療について
リハビリテーション・医療機器
- 筋肉や関節の痛みに対する早期からのリハビリテーション
- HAL医療用下肢タイプ(ロボットスーツ)による歩行運動
呼吸の補助・管理
- 呼吸の補助(NIV / BiPAP):マスクを用いる方法
- 気管切開:気管にチューブを入れる方法
- 吸引:貯まったたんを吸い出す方法
- 人工呼吸器(TIV):気管切開をして用いる方法
栄養補給・食事の工夫
- 姿勢:体をしっかり起こす、あごを引いて飲む、首を支える
- 食べ方:少しずつ飲み込む、食後すぐ横にならない、お口のケアも忘れずに
- 栄養:高カロリー・高たんぱく質、「体重を減らさない」ことが重要
- 食事形態の工夫:柔らかく水気の多いもの、とろみをつける
- 経管栄養・胃ろう:鼻やお腹に開けた小さな穴から、管による栄養補給
コミュニケーション支援
- スマホや文字盤を使った会話
- 動かせる部位や視線などを使った意思伝達装置の利用
一人で悩まずに相談できる専門家・支援窓口
ALSと診断されたり、症状に不安を感じたりしたとき、一人で抱え込む必要はありません。 ALSの治療や療養では、主治医や地域の保健師、ケアマネジャー、難病相談支援センターなど、 多くの専門家や公的支援とつながりながらサポートを受けることができます。 ご自身やご家族のこれからの生活に、ぜひ役立ててください。
医療・介護の専門家への相談
- 主治医
- 地域の保健師
- 介護保険のケアマネージャー
- 都道府県の難病医療連絡協議会の専門員(難病の医療提供体制)
- 都道府県の難病相談支援センター
- 地域の難病拠点病院
受けられる公的介護・医療支援
- 訪問看護師(介護事業所から)
- ヘルパー
- 訪問診療
患者会による情報提供
日本ALS協会(外部リンク↗ )
実施しているALSの研究
当院の脳神経内科では、最新の医療技術と知識を駆使して、脳・神経・筋疾患に関する臨床研究を積極的に進めています。
その中には、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者さんを対象にした臨床研究もあり、詳しく知りたい方は、
以下のリンクから詳細をご覧ください。研究課題や公開文書などさまざまな情報を提供しております。
📝論文掲載情報
筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関する新たな研究内容が、 このたび論文として発表されましたのでご報告いたします。
脳神経内科医長 藤原善寿
タイトル:Association between creatinine-to-cystatin C ratio and ALSFRS-R across clinical phenotypes
掲載誌:BMC Neurol. 2026 May 25;26(1):468. doi: 10.1186/s12883-026-04983-6.
著者:Yoshihisa Fujiwara, Akihiro Hashiguchi, Shiori Yamashiro, Hiroshi Seno, Yuichiro Ohya, Daigo Yasutomi, Natsumi Fujisaki, Miwako Kido, Shugo Suwazono, Takashi Tokashiki
BMC Neurology(外部リンク↗ )
